再生医療コラム

2024/10/9

再生医療による美容効果と種類を解説

近年、美容医療の分野で大きな注目を集めているのが、再生医療です。 肌のシワやたるみ、薄毛などのアンチエイジングに効果があるとされ、従来の美容医療とは一線を画す革新的な治療法として期待されています。 しかし、再生医療というと難しいイメージがあり、具体的にどのような治療なのか分からない人も多いのではないでしょうか。 そこで今回は、再生医療の概要から美容分野での応用まで、詳しく解説していきます。

再生医療とは

再生医療の定義と特徴

再生医療とは、病気やケガで失われた体の機能を、細胞を用いて再生させる医療のことを指します。

人間の体は本来、少しずつ古い細胞が入れ替わることで、健康を維持しています。 しかし、加齢やストレス、病気などによって、この再生能力が低下してしまうことがあります。

再生医療では、体外で培養した細胞を患部に移植することで、失われた機能の回復を促すことができます。

従来の治療法とは異なり、自然治癒力を高めることで根本的な改善が期待できるのが大きな特徴です。

また、自分自身の細胞を使用するため、拒絶反応などのリスクが少ないことも利点の一つと言えるでしょう。

再生医療の主な種類

再生医療には、使用する細胞の種類によって大きく3つに分類されます。 それぞれの特徴を見ていきましょう。

体性幹細胞

体性幹細胞は、骨髄や脂肪組織など、成体の体内に存在する幹細胞のことを指します。

もともと体内に備わっている幹細胞であるため、倫理的な問題が少なく、比較的安全性が高いとされています。

ただし、年齢とともに数が減少し、採取できる細胞数に限りがあることが課題です。

体性幹細胞は、整形外科領域で軟骨や骨の再生に利用されることが多く、美容分野でも応用が進んでいます。

ES細胞

ES細胞は、受精卵から作製される胚性幹細胞のことを指します。

体性幹細胞と比べ、様々な細胞に分化する能力が高いことが特徴です。

しかし、受精卵を使用するため、「人の命の始まりをどう扱うか」といった倫理的な問題があります。

また、細胞が未分化な状態であるため、がん化のリスクなども指摘されています。

iPS細胞

iPS細胞は、体細胞に特定の遺伝子を導入することで作製される、人工多能性幹細胞のことを指します。

ES細胞と同等の分化能を持ちながら、倫理的な問題が回避できることが大きな利点です。

山中伸弥教授がノーベル生理学・医学賞を受賞したことでも有名ですね。

iPS細胞は、パーキンソン病などの難病治療に応用が期待されていますが、安全性の確認にはまだ時間がかかるとされています。

美容分野でも、iPS細胞を用いたシワ・たるみ治療の研究が進められており、将来的な実用化が期待されています。

以上のように、再生医療には様々な種類の細胞が用いられており、それぞれ特徴やメリット・デメリットがあります。 美容分野では、主に体性幹細胞を用いた治療が行われているのが現状です。 次は、再生医療による美容効果について詳しく見ていきましょう。

再生医療における美容への効果

再生医療は、美容分野においても大きな可能性を秘めています。 シワやたるみ、薄毛など、加齢に伴う様々な悩みに対して、根本的なアプローチが期待できるからです。 ここでは、再生医療による美容効果について、詳しく見ていきましょう。

従来の美容医療との違い

従来の美容医療では、外科的な処置によって一時的な改善を図ることが主流でした。

例えば、ボトックス注射やヒアルロン酸注入は、シワを一時的に目立たなくする効果はありますが、根本的な解決にはなりません

なぜなら、加齢によって衰えた肌の機能そのものを回復させるわけではないからです。

一方、再生医療では、細胞レベルで肌の再生を促すことで、内側から若々しさを取り戻すことができます。

言わば、「原因に直接アプローチする治療法」といえるでしょう。

ただし、即効性は低く、治療効果が表れるまでに時間がかかるのが特徴です。

肌の若返りとアンチエイジング

再生医療による美容効果で特に注目されているのが、肌の若返りとアンチエイジングです。

加齢とともに、肌のコラーゲンやヒアルロン酸が減少し、シワやたるみが目立つようになります。

これに対し、再生医療では、線維芽細胞を増殖させることで、肌のハリや弾力を取り戻すことができます。

また、肌のターンオーバーを正常化させることで、シミやくすみの改善も期待できます。

さらに、再生医療に用いる幹細胞には、紫外線による肌ダメージを修復する効果もあるといわれています。

つまり、再生医療は、肌の老化を根本から予防することができるのです。

ただし、個人差はありますが、治療効果が実感できるまでに半年から1年ほどかかることが一般的です。

じっくりと肌の変化を待つ必要がありますが、持続的なアンチエイジング効果が期待できる点は大きな魅力といえるでしょう。

毛髪再生治療

肌の若返りと並んで、再生医療に期待が寄せられているのが毛髪再生治療です。

薄毛や抜け毛は、男女問わず悩みの種となるもの。

従来の育毛剤では限界があるため、「髪を生やす」ことができる再生医療に注目が集まっています。

毛髪再生治療では、毛母細胞(毛乳頭細胞)を増殖させることで、新しい髪を生やすことができます。

具体的な治療法としては、以下のようなものがあります。

  • 自己毛髪由来の毛乳頭細胞を用いる方法
  • 他家由来の毛乳頭細胞を用いる方法
  • iPS細胞から毛乳頭細胞を作製する方法

いずれも、毛乳頭細胞を直接頭皮に注入することで、発毛を促すことができます。

ただし、現時点ではまだ研究段階であり、確立された治療法とはいえません

安全性や有効性については、今後の臨床研究の結果を待つ必要があります。

また、毛髪再生治療は自由診療であるため、高額な費用がかかることにも注意が必要です。

とはいえ、薄毛に悩む人にとっては朗報といえるでしょう。

将来的には、再生医療による毛髪再生が一般的な治療法となることが期待されています。

以上のように、再生医療は肌の若返りや毛髪再生など、美容分野でも大きな可能性を秘めています。 従来の美容医療とは一線を画す、画期的な治療法といえるでしょう。 ただし、現時点ではまだ発展途上の分野であり、安全性や有効性は十分に確認されていない点には注意が必要です。 医療機関選びを慎重に行い、信頼できる専門医のもとで治療を受けることが大切といえます。

美容分野で用いられる再生医療の種類

美容分野で行われている再生医療には、様々な種類があります。 ここでは、代表的な治療法について詳しく見ていきましょう。

真皮繊維芽細胞療法

真皮繊維芽細胞療法は、自分自身の皮膚から採取した真皮線維芽細胞を培養し、肌に注入する治療法です。

真皮線維芽細胞は、コラーゲンやエラスチンなどの肌のハリや弾力に関わる成分を生成する細胞です。

加齢とともに減少してしまう真皮線維芽細胞を補充することで、シワやたるみを改善することができます。

また、真皮線維芽細胞は、メラニンの生成を抑制する働きもあるため、シミやくすみの改善にも効果が期待できます。

治療の流れとしては、まず耳の裏などから皮膚を採取し、専門の細胞培養センターで真皮線維芽細胞を増殖させます。

その後、培養した細胞を注射器で目元や口元など、気になる部位に注入していきます。

治療回数は、個人差がありますが、3~5回程度で効果を実感できるとされています。

ただし、細胞を十分量まで培養するには1~2ヶ月の期間が必要となります。

また、高額な治療費がかかることも考慮する必要があります。

PRP皮膚再生療法

PRP皮膚再生療法は、自分自身の血液から抽出した多血小板血漿(PRP)を用いる治療法です。

血小板には、成長因子が豊富に含まれており、肌の再生や創傷治癒を促進する働きがあるとされています。

PRP皮膚再生療法では、まず自分の血液を採取し、遠心分離機で血小板を濃縮します。

濃縮したPRPを、皮膚の真皮層に注射することで、肌のハリやツヤ、キメの改善が期待できます。

一般的な治療の流れとしては、以下のようになります。

  1. 血液を採取し、PRPを精製
  2. 麻酔クリームを塗布
  3. PRPを真皮層に注射
  4. cooling maskで鎮静

治療時間は約30分ほどで、ダウンタイムはほとんどありません

1クールは、2~4週間隔で3~6回の治療を行うのが一般的です。

即効性はありませんが、肌の内側から改善が期待できるのが特徴です。

自己脂肪幹細胞点滴

自己脂肪幹細胞点滴は、自分自身の脂肪組織から採取した幹細胞を用いる治療法です。

脂肪組織由来幹細胞(ADSC)は、肌の再生能力が高く、様々な細胞に分化する能力を持つとされています。

自己脂肪幹細胞点滴では、まず腹部や太ももなどの脂肪組織を採取し、専門の細胞培養センターでADSCを分離・培養します。

培養したADSCを、点滴で静脈内に投与することで、肌の再生や若返り効果が期待できます。

また、ADSCは血管新生や抗炎症作用もあるとされ、全身の健康維持にも寄与するとされています。

ただし、脂肪組織の採取には局所麻酔が必要であり、術後の腫れや痛みを伴うことがあります。

また、細胞培養には数週間の期間と高額な費用がかかることも考慮する必要があります。

W-PRP療法

W-PRP療法は、PRPに加え、白血球を含む血漿を用いる治療法です。

白血球には、マクロファージなどの免疫細胞が含まれており、肌の抗炎症作用や修復能力を高めるとされています。

W-PRPを皮膚に注入することで、ニキビや肌荒れの改善、肌のキメの整理などが期待できます。

また、発毛促進効果もあるとされ、薄毛治療にも用いられています。

治療の流れは、PRP皮膚再生療法と同様ですが、白血球の分離に時間がかかるため、多少時間を要します。

NK細胞療法

NK細胞療法は、自分自身のNK細胞(ナチュラルキラー細胞)を用いる治療法です。

NK細胞は、ウイルスに感染した細胞やがん細胞を攻撃する免疫細胞です。

NK細胞の活性を高めることで、肌の免疫力を高め、炎症を抑える効果が期待できます。

NK細胞療法では、まず自分の血液からNK細胞を分離し、特殊な装置で培養・活性化させます。

活性化したNK細胞を点滴で静脈内に戻すことで、全身の免疫力アップが期待できます。

また、肌のターンオーバーを正常化させることで、シミやくすみ、ニキビなどの改善にも効果があるとされています。

ただし、NK細胞療法は自由診療であり、治療費が高額になることが多いです。

また、効果には個人差があることから、過度な期待は禁物といえます。

以上のように、美容分野で用いられる再生医療には様々な種類があり、それぞれ特徴が異なります。 症状や目的、予算などに応じて、適した治療法を選択することが大切です。 信頼できる医療機関で、十分なカウンセリングを受けたうえで治療に臨むことをおすすめします。

再生医療を受けるための注意点

再生医療は、従来の美容医療とは異なるアプローチで肌の悩みを改善できる画期的な治療法です。 しかし、その一方で、まだ発展途上の医療技術であることから、安全性や有効性には不明な点も多いのが現状です。 再生医療を受けるにあたっては、十分な注意が必要不可欠といえます。 ここでは、再生医療を受ける際の注意点について解説します。

適切な医療機関の選択

再生医療を受ける際に最も重要なのが、信頼できる医療機関を選ぶことです。

再生医療は自由診療であるため、誰でも簡単に治療を受けられる反面、治療の質にばらつきがあるのも事実です。

中には、根拠のない効果を謳って高額な費用を請求する悪質なクリニックも存在します。

医療機関選びに際しては、以下の点をチェックすることが大切です。

  • 再生医療等安全性確保法に基づく認定を受けている
  • 細胞培養を行う施設が国の基準をクリアしている
  • 治療実績と症例数が豊富である
  • カウンセリングが丁寧で、リスクもきちんと説明してくれる

特に、再生医療等安全性確保法は、再生医療を適切に実施するための法律です。

この法律に基づく認定を受けているかどうかは、安全性を見極める上で重要なポイントといえます。

また、医師の経験や実績も大切な判断材料です。

再生医療は高度な技術を要する治療です。 経験豊富な医師のもとで治療を受けることが、安全で確実な効果を得るために不可欠といえるでしょう。

治療前のカウンセリングの重要性

再生医療を受ける際は、事前のカウンセリングが非常に重要です。

再生医療は、自分の細胞を使用するとはいえ、体への負担が全くないわけではありません。

また、効果には個人差があり、必ずしも期待通りの結果が得られるとは限りません

治療前のカウンセリングでは、自分の症状や体質に合った治療法を確認するとともに、起こり得るリスクを理解しておくことが大切です。

美容外科医には、一人一人の悩みをしっかりと聞き、最適な治療計画を立ててもらいましょう。

また、再生医療には高額な費用がかかることも多いため、支払い方法や返金の有無についても確認が必要です。

カウンセリングは、信頼できる医師との関係を築く良い機会でもあります。 疑問点は遠慮なく質問し、納得したうえで治療に臨むことが重要です。

治療後のアフターケア

再生医療は、治療後のアフターケアも重要なポイントです。

治療後は、細胞が定着し効果が表れるまでに一定の時間がかかります

この間、適切なスキンケアを行い、肌の再生を助ける必要があります

また、治療部位によっては、腫れや赤みなどの症状が出ることもあるため、注意深い観察が欠かせません。

異常が見られた際は、すぐに医療機関に相談しましょう。

アフターケアについても、事前のカウンセリングでしっかりと説明してもらうことが大切です。

治療後のスキンケア方法や、症状への対処法について、分からないことがあれば遠慮なく質問しましょう。

医療機関との連携を密に取ることで、安心して治療に専念することができます。

以上のように、再生医療を受ける際は、適切な医療機関選びと事前のカウンセリング、そして治療後のアフターケアが重要です。 安全で確実な効果を得るために、これらの点に十分留意しながら治療に臨むことが大切といえるでしょう。

まとめ

再生医療は、シワやたるみ、薄毛など、加齢に伴う様々な肌の悩みを改善する革新的な治療法として注目を集めています。

肌の若返りや毛髪再生など、従来の美容医療では難しかった悩みにアプローチできる可能性を秘めています。

美容分野で用いられる再生医療には、真皮繊維芽細胞療法やPRP皮膚再生療法、脂肪幹細胞療法など、様々な種類があります。 いずれも、自分自身の細胞を用いることで、肌の再生能力を高めることを目的とした治療法です。

ただし、再生医療は新しい医療技術であるがゆえに、安全性や有効性には不明な点も多いのが現状です。

再生医療を受けるにあたっては、信頼できる医療機関を選ぶことが何よりも大切です。 また、事前のカウンセリングで治療内容やリスクをしっかりと理解するとともに、治療後のアフターケアにも注意を払う必要があります。

再生医療は、美容医療の選択肢を大きく広げる可能性を秘めています。 しかし、その効果は万能ではなく、個人差もあることを理解しておくことが重要です。

過度な期待は禁物ですが、自分に合った治療法を見つけることができれば、今まで諦めていた悩みを解決できるかもしれません。

再生医療は、まだ発展途上の医療技術ですが、その可能性は計り知れません。 安全性を最優先しながら、適切に活用していくことが求められるでしょう。

美容医療の選択肢の一つとして、再生医療にも注目が集まっています。 信頼できる医療機関のもと、十分に検討したうえで再生医療に臨むことをおすすめします。

再生医療が切り拓く美容医療の未来に、大きな期待が寄せられています。

 

記事監修者プロフィール

記事監修者:吹田真一吹田真一

資格

  • 日本麻酔科学会認定麻酔科専門医
  • 日本ペインクリニック学会
  • 日本区域麻酔学会
  • 日本肥満学会 会員
  • 抗加齢学会 会員
  • 麻酔科認定医
  • 日本心臓血管麻酔学会 会員
  • 日本周術期経食道心エコー認定

経歴

  • 国立循環器病研究センター勤務を経てLIGHT CLINIC開業