2024/9/20
幹細胞とは、その自己再生能力と他細胞への分化能力を持つ特殊な細胞です。その特性により、再生医療の分野で革新的な役割を果たしております。人間の幹細胞は、疾患治療や組織修復、美容と老化防止など、様々な分野で重要な役割を担っております。
特定の組織に存在し、その組織特有の細胞を生成する能力を有しております。例えば、血液幹細胞や皮膚幹細胞などがこれに該当いたします。
これは最も特別な幹細胞であり、ほぼ全ての種類の体細胞に分化することが可能です。しかしながら、倫理的問題や腫瘍形成のリスクがあることが課題とされております。
体細胞から作られ、ES細胞と同じくらいの多能性を有しております。また、移植時の拒絶反応のリスクが低く、患者に適した治療が可能となっております。
幹細胞による組織修復のメカニズムを細かく見ていきましょう。幹細胞がどのようにして組織を修復し再生するかには、次のような詳細なプロセスが関わっています。
幹細胞は自己を複製することができ、このプロセスで細胞の遺伝情報が正確にコピーされ、新しい細胞が作られます。幹細胞は未分化の状態を保ちつつも、適切なシグナルを受け取ることで必要な細胞(皮膚細胞、筋細胞、神経細胞など)へと分化する準備をします。つまり、幹細胞は、体の中のなんにでも変身できるものです。自分のクローンを作ることができるし、必要に応じて体のいろいろな部品に変身することができます。
組織損傷時、細胞は炎症によって多くのシグナル分子を放出します。これらのシグナルは幹細胞に向けた「救援要請」のようなものです。幹細胞はこれらのシグナルを受け取り、体内で移動する能力(化学誘導性)を使って、正確に損傷部位へと導かれます。つまり、体のどこかが傷つくと、その場所からSOS信号が出ます。幹細胞はこれをキャッチして、「おっと、ここに行かなくちゃ」と移動を開始します。
幹細胞が損傷部位に到達すると、そこでの環境が幹細胞の振る舞いを変化させます。この環境の変化に応じて、幹細胞は分化を始めます。つまり、傷ついた場所に到着した幹細胞は、その場の状況に合わせて、必要な細胞に変身します。骨が折れたら骨の細胞に、心臓がダメージを受けたら心臓の細胞になるんです。
幹細胞は周囲の細胞やその他の環境因子との間で複雑なコミュニケーションを行います。成長因子、サイトカイン、細胞間接着分子などが、分化や増殖の程度を調節します。
幹細胞は周りの細胞と協力しながら、どのくらい増えたり変身したりすべきかを調整します。これには、細胞同士の合図や特別なたんぱく質が使われます。いわゆるエクソソームはこの能力の一部です。
幹細胞には待機場みたいな場所が存在します。これを幹細胞ニッチと呼んでいて、
幹細胞が生存、自己更新、分化を行うための特別な微小環境なんです。ここでは細胞外基質、周囲の細胞、血管、神経などが複合的に作用し、幹細胞の振る舞いを制御します。つまり幹細胞には「ニッチ」と呼ばれる特別な待機所があり。ここで、幹細胞は安全を保ちつつ、次の指令を待っています。
幹細胞が何度分裂しようとも、役割は変わるがDNA配列は変わらない現象です。これをエピジェネティクスと呼んでいて、専門的な表現をすると、DNAメチル化やヒストン修飾などが、特定の遺伝子のオン・オフを切り替え、細胞の運命を決定します。
簡単な話、幹細胞の仕事は、体の中の遺伝子のオン・オフスイッチを操作することによって細かくコントロールされています。このスイッチが細胞の運命を決めるということです。
吹田真一