再生医療コラム

2025/1/31

再生医療の種類と費用の目安 – 治療法ごとの相場を解説

再生医療とは

再生医療の定義と分類

再生医療とは、病気やケガで失われた体の機能を再び取り戻すための治療法のことをいいます。

日本再生医療学会によると、再生医療は「機能障害や機能不全に陥った生体組織・臓器に対して、細胞を積極的に利用して、その機能の再生をはかるもの」と定義されています。

再生医療は、人の生命や健康に与える影響の度合いによって、以下の3つに分類されます。

1. 第1種再生医療等:iPS細胞やES細胞など、これまでヒトへの実施例が少なく、リスクが高いと考えられる治療
2. 第2種再生医療等:患者自身の体性幹細胞などを用いた治療で、ある程度ヒトへの実施例があり、中程度のリスクが想定される治療
3. 第3種再生医療等:ごく簡単な加工を施した細胞を用いるなど、リスクが低いと考えられる治療

医療機関がこれらの再生医療を実施するには、それぞれの分類に応じた国の認可を得る必要があります。

再生医療に用いられる幹細胞の種類

再生医療では、さまざまな種類の幹細胞が用いられています。

幹細胞とは、他の細胞に変化する能力(分化能)と、自分と同じ性質の細胞を作り出す能力(自己複製能)を持つ特別な細胞のことです。

再生医療でよく用いられる幹細胞には、以下のようなものがあります。

・ES細胞(胚性幹細胞):受精卵から作製される万能性を持つ幹細胞
・iPS細胞(人工多能性幹細胞):体細胞に特定の遺伝子を導入することで作製される、ES細胞に似た性質を持つ幹細胞
・体性幹細胞:成体の各組織に存在する組織特異的な幹細胞(骨髄幹細胞、脂肪幹細胞など)
・臍帯血幹細胞:へその緒や胎盤に含まれる造血幹細胞

このうち、特に再生医療で広く利用されているのが体性幹細胞の一種である間葉系幹細胞です。

間葉系幹細胞は骨や軟骨、脂肪などに分化する能力を持ち、骨髄や脂肪組織などから比較的容易に採取できることから、現在の再生医療研究や治療に多く用いられています。

また、iPS細胞などの多能性幹細胞は、心筋細胞や神経細胞など様々な細胞に分化させられる可能性を秘めており、将来の再生医療への応用が期待されています。

再生医療の主な治療法と費用相場

慢性疼痛に対する幹細胞治療

慢性的な痛みに悩む患者さんに対して、自分自身の脂肪組織から採取した幹細胞を用いる治療法があります。

この治療では、患者さんの腹部などから脂肪組織を採取し、そこに含まれる脂肪由来幹細胞を分離・培養します。

培養した幹細胞は点滴により患者さんの体内に戻されます。

幹細胞には、炎症を抑えたり、傷ついた組織を修復したりする働きがあるため、慢性的な痛みの緩和が期待できるのです。

慢性疼痛に対する幹細胞治療の費用相場は、おおよそ300万円から1,200万円程度です。

線維芽細胞療法

線維芽細胞療法は、肌の老化に伴うシワやたるみを改善することを目的とした治療法です。

この治療では、患者さん自身の耳の裏などの皮膚を少量採取し、そこから線維芽細胞を分離・培養します。

培養した線維芽細胞を皮膚の真皮層に注入することで、肌のハリや弾力性の向上、シワの改善などが期待できます。

線維芽細胞療法の費用は、細胞の培養・保管費用を含めて240万円から460万円程度が相場となっています。

ANK療法、BAK療法、NK療法

ANK療法、BAK療法、NK療法は、いずれもがん治療を目的とした免疫細胞療法です。

これらの治療法では、患者さんの血液中のリンパ球を採取し、体外で活性化・増殖させます。

主ながん免疫細胞療法の種類と特徴
治療法 使用する免疫細胞 特徴
ANK療法 NK細胞 活性化・増殖させたNK細胞を点滴投与
BAK療法 NK細胞、γδT細胞、T細胞 複数の免疫細胞を同時に利用
NK療法 NK細胞 選択的にNK細胞を増殖・活性化

これらの治療法の費用は、数百万円から1,000万円以上と高額になる場合が多いです。

例えば、ANK療法の費用は投与回数にもよりますが、240万円から650万円程度が一般的です。

再生医療のメリットとデメリット

再生医療の大きなメリットは、患者さん自身の細胞を用いるため、拒絶反応などのリスクが低い点です。

また、外科手術に頼らず、比較的侵襲性の低い治療が可能なケースも多いです。

一方、デメリットとしては、治療費が高額になりがちなことが挙げられます。

公的医療保険の適用外となることが多く、全額自費負担となるケースがほとんどです。

また、再生医療は発展途上の分野であり、治療効果には個人差があることも留意が必要です。

さらに、安全性への懸念から、倫理的・法的規制が厳しいという側面もあります。

再生医療は将来有望な治療法ですが、現時点では利点とリスクを十分に理解した上で、慎重に選択することが重要だといえるでしょう。

再生医療にかかる費用を抑える方法

高額な治療費を補助する公的制度

再生医療の治療費は高額になるケースが多いですが、公的な制度を利用することで負担を軽減できる場合があります。

代表的なのは高額療養費制度です。

この制度は、医療費の自己負担額が一定の上限を超えた場合に、超過分が支給される仕組みです。

所得に応じて自己負担限度額が設定されており、年収や加入する健康保険の種類によって、限度額は異なります

ただし、高額療養費制度が適用されるのは保険適用の治療に限られ、自由診療で行われることの多い再生医療では利用できないケースが多いです。

一部の再生医療メニューでは、先進医療に指定されているものもあり、その場合は高額療養費制度の対象となる可能性があります。

再生医療を受ける際は、事前に医療機関に制度の適用について確認しておくと良いでしょう。

比較的安価な再生医療メニュー

再生医療のすべてが高額というわけではありません。

比較的費用を抑えられるメニューもいくつかあります。

培養上清

培養上清療法は、幹細胞を培養した際の培養液を利用する治療法です。

幹細胞そのものは含まれていませんが、幹細胞が分泌する成長因子などの有用物質が含まれています。

全身の活性化や免疫力向上、アンチエイジングなどに効果が期待できます。

培養上清療法の費用は、1回あたり数万円から10万円程度が相場です。

注射・点滴療法(エイジングケア)

再生医療技術を応用したアンチエイジング治療も、比較的リーズナブルな価格設定となっています。

例えば、サイトカイン注射やビタミン点滴などは、1回あたり1万円前後で受けられるクリニックがあります。

定期的に受けることで、肌の質や全身の調子を整える効果が期待できます。

ただし、エイジングケア目的の治療は自由診療となるため、全額自己負担になることは覚えておく必要があります

美肌・美容治療

PRP療法や線維芽細胞療法など、肌の若返りを目的とした再生医療メニューも比較的手が届きやすい価格設定のものがあります。

例えば、PRP療法の場合、1回の施術費用は5万円から10万円程度が一般的です。

線維芽細胞療法も、部分的な治療であれば数十万円程度で受けられるクリニックがあります。

ただし、治療効果や持続性には個人差があり、複数回の施術が必要なケースも多いです。

トータルの費用を考えると、高額になる可能性もあるため、事前の説明をよく聞いて、納得してから治療を受けることが大切です。

まとめ

今回は、再生医療の種類や費用相場、治療法ごとの特徴、そして費用を抑える方法について詳しく解説してきました。

再生医療とは、事故や病気で損なわれた身体機能を再生させる最先端の医療技術です。

幹細胞の持つ再生能力を利用することで、これまで治療が難しかった病気やケガに対する新たな治療の可能性が開かれつつあります。

再生医療にはさまざまな種類があり、治療に用いる細胞の種類や治療のリスクレベルに応じて、第1種、第2種、第3種に分類されています。

中でも、慢性の痛みや関節疾患、美容医療などに用いられる第2種、第3種の再生医療は、すでに全国の医療機関で実施されつつあります。

ただし、現時点では多くの再生医療メニューが自由診療に分類され、治療費は全額自己負担となるのが一般的です。

費用は数十万円から数百万円と幅がありますが、高額になるケースが少なくありません。

一方で、公的医療保険が適用される再生医療もわずかながら存在し、先進医療として指定を受けているメニューもあります。

また、比較的安価で受けられるメニューとして、幹細胞培養上清を用いた点滴療法や、PRP療法などの美容医療も選択肢の一つといえるでしょう。

再生医療はまだ発展途上の分野であり、治療効果や安全性には個人差もあります。

費用対効果を見極めることも重要です。

とはいえ、これまで治療法のなかった病気に光明を示す可能性を秘めた医療技術であることは間違いありません。

今後の研究のさらなる進展と、再生医療のより一層の普及に期待したいところです。

記事監修者プロフィール

記事監修者:吹田真一吹田真一

資格

  • 日本麻酔科学会認定麻酔科専門医
  • 日本ペインクリニック学会
  • 日本区域麻酔学会
  • 日本肥満学会 会員
  • 抗加齢学会 会員
  • 麻酔科認定医
  • 日本心臓血管麻酔学会 会員
  • 日本周術期経食道心エコー認定

経歴

  • 国立循環器病研究センター勤務を経てLIGHT CLINIC開業